講座&セミナー レポート ・ アピール
第4回ユニットケア全国セミナー実行委員会レポート
施設福祉の今後の方向性について


 第4回ユニットケア全国セミナー実行委員会は、セミナーの準備と平行して、下記の見学会、講演会を開催し、今後の施設福祉のあり方について議論を深めました。このレポートは千葉県における今後の施設福祉施策の基本となるべき認識について、実行委員の総意でまとめたものです。


2001年12月 千葉県八街市 全室個室、ユニット型特別養護老人ホーム「風の村」見学
 講演 「個室、ユニットケア」                   京都大学大学院教授 外山 義氏
2002年 2月 千葉県船橋市 個室、ユニット型知的障害者入所施設「のまる」見学
 講演 「知的障害者の地域生活支援の考え方と実践」   宮城県福祉事業団理事長 田島 良昭氏
2002年 4月 千葉市  老人保健施設「晴山苑」見学
 講演 「既存施設ユニット化の実践」              特養・いずみの園(大分県)介護課長 岩崎 深雪氏



名誉委員長
実行委員長
事務局長
実行委員(レポート起草委員)
 同    (     同    )
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堂本 暁子 (千葉県知事)
池田  徹 (小規模デイサービス・グループホーム千葉県連絡会)
池田 昌弘 (特養・老健・医療施設ユニットケア研究会)
高橋 利宏 (千葉県社会福祉士会)
西表 宏員 (千葉県介護福祉士会)
宮代 隆治 (千葉県知的障害者福祉協会)
武田 和典 (特養・老健・医療施設ユニットケア研究会)
松崎 泰子 (淑徳大学教授)
武村 昭雄 (千葉県高齢者福祉施設協会)
平山登志夫 (千葉県老人保健施設協議会)
鈴木冨美子 (千葉県社会福祉事業団)
永島 光枝 (呆け老人をかかえる家族の会理事)
鵜沢 一郎 (千葉県社会福祉協議会)
佐久間 豊 (千葉市社会福祉協議会)
小川 雅司 (千葉県健康福祉部健康福祉政策課)
高柳 哲男 (千葉県健康福祉部障害福祉課)
宇佐美 誠 (千葉県健康福祉部社会福祉課)
秋山 千里 (千葉県健康福祉部高齢者福祉課)
小泉 知一 (千葉市高齢障害部高齢施設課)


【施設福祉の流れ】
 1963年(昭和38)年に制定された老人福祉法に基づく特別養護老人ホーム(特養)は、アメリカのナーシングホームをモデルにしたものと言われています。制定当時の国内の疾病構造として、脳血管障害後遺症としての、いわゆる“寝たきり老人”が多く、ベッド上生活を余儀なくされた人の“長期ケア”を行う社会福祉施設として位置付けられてきました。制度発足当初、ハード面では、“寝たきり老人”であるがゆえに「6人部屋」「8人部屋」が中心であり、大規模な施設もみられました。また、1980年代になると、いわゆる“徘徊型の痴呆性老人”が多く入所するようになり、回廊式の特養が建設されるようになりました。またソフトとしてのケアをみると、「食事」「入浴」「排泄」の三大処遇、あるいは、これに「移動」を加えた四大処遇を基本的処遇としてきました。入所者のQOL向上に努めてきた施設も少なくありませんが、全体としては、施設内の生活は集団処遇と呼ばれる団体生活であり、それが、固有のペースで営まれる在宅生活との大きな相違点です。このように、特養は“寝たきり”を余儀なくされた患者の長期療養施設として、限りなく病院に近い発想でつくられたものであり、病気の人が療養のために一定の生活上の制約を受けることは止むを得ないという考え方が、個々の生活ニーズに基づくケアが重視されてこなかった原因と言えましょう。

 老人保健施設(老健)は、病後の高齢者が自宅での生活に戻るためのリハビリ施設です。老健によってはこの目的に沿った運営ができているところもありますが、現実は長期入所者も多く、入所者の生活ニーズに応えることが求められています。

 また、障害者の入所施設は、障害者を保護するとともに将来の自立に向けての指導や訓練を行い、将来、社会に復帰することが目的とされていますが、現実はこの目的と程遠い実態です。法が整備され、それにより施設が全国に作られるようになった初期から現在にいたるまで、入所者の在宅復帰は極めて低率に終始しており、一定利用期間の後に再び社会に還るという通過型施設としての役割をほとんど果たせず、終生保護型施設として機能してきたというのが現実です。

 総じて、障害各領域、高齢分野に共通して、入所系施設はそお本来の目的はともかく現実には長期入所あるいは終の棲家として機能してきたと言えましょう。

 施設を特徴付けてきたのは「集団処遇」と「地域社会との隔絶」です。朝起きてから夜寝るまで、余暇を含めて暮らしのあらゆる場面は集団行動によって成り立っています。効率的な管理が優先され、生活はさまざまな規則や約束事にしばられており、人が人らしくあるために必要なプライバシーや人権、個性が軽視されてきました。6人部屋や4人部屋で24時間365日そして、何年も、施設によっては何十年もプライバシーのない生活を余儀なくされるのです。ストレスの蓄積が入所者の心理、精神に及ぼす影響は計り知れません。従順で耐えることに慣れ、自分らしさを発揮することに無気力な人間になったり、精神のバランスを崩したり、或いは高齢者の痴呆症状の悪化を招いていることも否定できません。

 また、施設は街中から離れた場所につくられることが多く、施設に入所することは、家族や地域社会と別れ、施設入所者との集団生活に移行することを意味していました。

 近年、ようやくにして、こうした施設福祉の現状に対する疑問が沸き起こってきています。高齢社会は、誰もが老い、生涯を抱えて生きていく可能性があることを、多くの人たちに気づかせました。かつては施設を自分が暮らすことになる場所とは誰も考えませんでした。特養を含めて、施設とは、障害やその他の事情があるごくわずかなひとが例外的に入所するところであり、自分や家族が関係する一部の人を除いて、施設の現状に対して関心を持つ人はいなかったのです。しかし、高齢化の進展により、多くの人が自分自身の問題として、施設福祉のあり方に大きな関心を持つようになってきました。



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