講座&セミナー レポート ・ アピール
第9回ユニットケア全国セミナー 実行委員会宣言

 99年に「第1回ユニットケア全国セミナー」を開催し、その中でユニットケアという新しい考え方を広く世に問うてから、すでに8年を数えます。この間、ユニットケアは国の施策として採用され、全室個室とともに今や居住系施設のスタンダードとして捉えられるまでに至っています。

 ユニットケアはまず、施設に入居するお年寄り(以下、「お年寄り」と表現します)と介護職員との関係を変えました。より小さな空間の中で、介護職員が、お年寄り一人ひとりの身近な存在として関わりをもつことにより、お年寄りの細かな変化に気づき、そのニーズに応えることができるようになりました。次に、施設内の環境を変えました。生活の場としてより強く意識されるようになり、できるだけ落ち着ける空間づくりが模索されるようになりました。さらには、ユニットケアは施設の組織そのものにも影響を与えるようになりました。お年寄りの思いに、より柔軟に応えるために、現場の職員に少しずつ大きな権限が与えられるようになりました。

 ユニットケアはまさに、従来の施設での暮らし方と介護のあり方を大きく変るきっかけとなりました。しかし、ユニットケアはまだまだ課題を抱えています。そうした課題の解決に向け、この実行委員会では、以下の3つの柱を訴えていくことを宣言いたします。

1)その人らしい暮らしの支援を追求します

 お年寄り一人ひとりがそれまで培ってきた暮らし方を、施設の中でも継続できるために必要な支援が、どういったものであるかを考え、実現に向けて努力します。また、地域で暮らし続けるため支援を行ってきた小規模事業所に学び、そうした事業所と連携することで施設に何ができるのかを考えます。

2)介護職員の身分保障を強く求めます

 その人らしい暮らしを実現するためには、職員の質の向上が求められます。しかし、職員の質の向上とともに、それを評価する仕組みがなければ、職員のモチベーションを維持し続けることは困難です。特に、昨今の介護職員の離職と、求人をしても応募者ゼロという現実は、質の向上以前に、施設の最低の運営にも支障をきたしています。質の向上とともに、職員自身が豊かなライフプランを描くことのできるよう、介護職員がその人らしく暮らせるような身分を保障できる介護報酬を求めます。

3)介護現場の変革を評価する報酬制度を求めます

 度重なる報酬改定により、多床室でユニットケアに取り組む多くの既存施設では、ユニットケアの継続を断念せざるをえない状況に追い込まれています。しかし、ユニットケアの誕生の背景には、既存施設における現場職員の試行錯誤があり、逆デイサービスやサテライトケアといった様々な取り組みもまた、既存施設におけるケアの変革の中から誕生したものです。

 廊下の一角を区切ってリビングとして使うなど、既存施設であっても積極的に変革に取り組む施設が、準ユニットケアとして評価される報酬制度を求めます。



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